猫の腎臓病の新薬「FeliAIM(フェリエイム)」はいつ使える?承認申請後の現状と見通しのアイキャッチ
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猫の腎臓病の新薬「FeliAIM(フェリエイム)」はいつ使える?承認申請後の現状と見通し

公開日 2026年10月24日

猫の慢性腎臓病を対象にしたAIM製剤「FeliAIM(フェリエイム)」は、2026年4月24日に農林水産省へ動物用医薬品としての製造販売承認が申請されました[1]。2026年10月24日時点で、開発元から承認・発売日・価格の公式な発表はありません[5]。この記事では、開発元の発表と論文、農林水産省が公表している審査期間の実績から、今どこまで進んでいて、使えるようになるまでにどれくらいかかりそうかをまとめました。費用の想定など開発者がニュース記事で話している内容は、ニュース記事であることを明記して分けて載せています。

先に結論

項目内容
薬の名前FeliAIM(フェリエイム)。開発・申請は株式会社IAM CAT[1][4]
対象猫の 慢性腎臓病[1]
今の段階承認審査中。2026年4月24日に農林水産省へ申請[1]。2026年10月24日時点で承認の発表はなし[5]
論文で報告された効果進行した慢性腎臓病の猫で、投与した猫の360日後の生存率は 80〜83%、投与しなかった猫は 20%。ただし投与した猫は 11頭 の探索的な研究[6]
承認までの期間の目安審議会で審議された動物用医薬品は、申請から承認まで中央値で 14.7〜35.7か月(2018〜2023年度)[8]。2026年4月の申請に当てはめると 2027年夏〜2029年春ごろ に相当
費用の想定(ニュース記事)6回の注射で 10万〜15万円程度 を想定していると報道。開発元の公式な発表ではない[11]
決まっていないこと承認日、発売日、正式な価格、使える猫の条件(効能・用法は承認で決まる)

AIMは猫の腎臓で何をしているのか

AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)は血液中にあるタンパク質で、ふだんは IgM という別のタンパク質にくっついています。腎臓が傷ついたときに IgM から離れて尿の中へ移り、尿細管に詰まった死んだ細胞のかけらを片付けるのを助けます[7]。

2016年の論文では、猫の AIM は IgM にくっつく力がマウスの 1000倍 強く、急性腎障害が起きても IgM から離れないことが報告されています[7]。そのため死んだ細胞のかけらが片付かず、急性腎障害から回復しにくくなります。論文では、急性腎障害からの回復が不十分なことが慢性腎臓病につながるため、猫が腎臓病で亡くなりやすい理由に AIM が関わっている可能性があるとしています[7]。

In cats, the AIM-IgM binding affinity is 1000-fold higher than that in mice, which is caused by the unique positively-charged amino-acid cluster present in feline AIM. Hence, feline AIM does not dissociate from IgM during AKI, abolishing its translocation into urine. This results in inefficient clearance of lumen-obstructing necrotic cell debris at proximal tubules, thereby impairing AKI recovery.

(猫では、AIM と IgM の結合の強さがマウスの1000倍高い。これは猫の AIM にだけある、正の電荷を帯びたアミノ酸の集まりによるものである。そのため猫の AIM は急性腎障害(AKI)が起きても IgM から離れず、尿の中へ移ることができない。その結果、近位尿細管の内腔をふさぐ壊死した細胞の残骸がうまく取り除かれず、急性腎障害からの回復が妨げられる)[7]

As insufficient recovery from AKI predisposes patients to chronic, end-stage renal disease, feline AIM may be involved crucially in the high mortality of cats due to renal disease.

(急性腎障害からの回復が不十分だと慢性・末期の腎臓病になりやすくなることから、猫の AIM は、猫が腎臓病で亡くなることが多い理由に深く関わっている可能性がある)[7]

FeliAIM は、この働かない AIM を外から補う薬として開発されてきました。

進行した腎臓病の猫で生存期間がのびたという報告

2026年1月に公開された論文では、慢性腎臓病の猫 216頭 を調べ、血液のクレアチニンが 2.9〜5.0 mg/dL の猫を研究の対象にしました[6]。そのうち尿毒素(インドキシル硫酸)の多い 26頭 を、AIM を投与する猫と投与しない猫に分けて、360日間の生存を比べています[6]。

グループ頭数360日後の生存率
マウスの AIM を投与6頭83%
猫の AIM を投与5頭80%
投与しない15頭20%

投与しなかった猫の生存期間の中央値は 167日 でした[6]。投与した猫では、腎臓の検査値や尿毒素の悪化も抑えられていたと報告されています[6]。尿毒素の少なかった 9頭 は、AIM を投与しなくても360日後に全頭が生きていました[6]。

この研究は、論文自身が承認の根拠にするための試験ではないと書いています。

Based on a hypothesis that the deficiency in AIM activation may contribute to the high susceptibility of cats to CKD, we investigated clinical impacts of recombinant AIM (rAIM) treatment in cats with advanced CKD, as an exploratory, non-pivotal study.

(AIM がうまく働かないことが、猫が慢性腎臓病(CKD)になりやすい一因かもしれないという仮説にもとづき、進行した慢性腎臓病の猫に組換え AIM(rAIM)を投与したときの臨床的な影響を、探索的で、承認の根拠となる主要な試験ではない研究として調べた)[6]

生存率については、論文の要旨で次のように書かれています。

The median survival time of non-treated controls was 167 days (95 % confidence interval [CI]: 116-217), whereas rAIM treatment significantly extended survival, with a cumulative survival rate of 0.83 (95 % CI: 0.53-1.0) at 360 days by mouse rAIM and 0.8 (95 % CI: 0.44-1.0) by feline rAIM compared to 0.20 (95 % CI: 0.0-0.40) in controls.

(投与しなかった猫の生存期間の中央値は167日(95%信頼区間:116〜217日)だった。一方、組換え AIM の投与で生存期間は有意にのび、360日時点の累積生存率は、マウスの AIM で0.83(95%信頼区間:0.53〜1.0)、猫の AIM で0.8(95%信頼区間:0.44〜1.0)で、投与しなかった猫の0.20(95%信頼区間:0.0〜0.40)を上回った)[6]

投与した猫の生存率の95%信頼区間は、マウスの AIM で0.53〜1.0、猫の AIM で0.44〜1.0と幅が広くなっています[6]。

投与した猫は合わせて11頭で、どの猫を投与するグループに入れたかの割り付け方法も要旨には書かれていません。論文の著者のうち2人は、開発元の IAM CAT の株式を持っていることを開示しています[6]。

治験から承認申請まで

承認申請の根拠になる治験は、論文とは別に行われています。開発元の発表を時系列に並べると次のとおりです。

日付出来事
2025年5月29日全国 26病院 で治験を開始[2]
2025年11月10日「間もなく治験が終了し、承認申請が行える見込み」と発表[3]
2026年2月22日販売名が「FeliAIM(フェリエイム)」に決定[4]
2026年4月24日農林水産省へ製造販売承認を申請[1]

治験の頭数や結果は、2026年10月24日時点で開発元のサイトでは公表されていません[2][5]。販売名はラテン語で猫を意味する「Felis」と「AIM」を組み合わせたものです[4]。

承認までは申請から1年〜3年ほどかかってきた

動物用医薬品は、農林水産省の審査で品質・有効性・安全性が確認されて、はじめて販売できます。新規性が高い製品は、外部の専門家でつくる薬事審議会でも審議されます[9]。新薬の場合、承認までは次の順に進みます[10]。

  • 事務局(動物医薬品検査所)による審査と、申請者への指摘・回答(原則2回)
  • 薬事審議会の調査会・部会での審議
  • 食品安全委員会・厚生労働省への諮問と答申
  • 承認

審議会で審議された動物用医薬品について、申請から承認までにかかった期間(中央値)は次のとおりです[8]。

年度承認件数申請から承認まで(中央値)
2018年度19件33.2か月
2019年度29件35.7か月
2020年度40件21.2か月
2021年度19件31.1か月
2022年度35件24.1か月
2023年度31件14.7か月

この期間には、審査する側の期間と、申請者が指摘に答えるための期間の両方が含まれます。農林水産省は審査する側の期間を 12か月 以内にすることを目標にしていて、2023年度は審議会で審議された医薬品で 7.8か月 でした[8]。

FeliAIM が審議会で審議されるかどうかは公表されていません。審議会で審議される場合、2026年4月24日の申請にこれまでの中央値を当てはめると、最も短かった2023年度の 14.7か月 で 2027年7月ごろ、最も長かった2019年度の 35.7か月 で 2029年4月ごろ に相当します。

承認時期の目安の計算方法

2026年4月24日に、各年度の総審査期間の中央値を足しました。1か月を30.4日として計算しています。

  • 14.7か月 ≒ 447日 → 2027年7月中旬
  • 35.7か月 ≒ 1,085日 → 2029年4月中旬

月の途中になるため、本文では「2027年7月ごろ」「2029年4月ごろ」と丸めています。これは過去の品目全体の中央値を当てはめたもので、FeliAIM の審査の進み具合を表すものではありません。

ニュース記事で伝えられている開発者の見通し

項目ニュース記事での内容
承認時期宮崎氏は「今年中に承認が下りれば」と話している
費用の想定6回の注射で 10万〜15万円程度 を想定
治験での投与方法末期に近い慢性腎臓病の猫に、2週間おき に静脈注射で 計6回 投与
治験での経過投薬から6か月で1匹も死ななかった。宮崎氏は「1年たっても同じで、顕著な効果が認められた」と話している
人間用の薬治験薬は年内の完成を目指していて、順調に進めば 3〜4年後 の実用化が見込まれる

記事では、農林水産省が新規性や社会的なニーズが高い医薬品を迅速に承認する取り組みを進めていることにも触れています[11]。FeliAIM にその取り組みが当てはまるかどうかは、農林水産省と開発元からは公表されていません。

費用は1回分ではなく、6回の注射を合わせた想定の金額です。診察や検査の費用が含まれるかどうかは、記事には書かれていません。治験の頭数や詳しい結果は、2026年10月24日時点で論文や開発元のサイトでは公表されていません[5]。

承認されてから動物病院で使えるようになるまで

承認されても、すぐに全国の動物病院で使えるとは限りません。製造販売する会社には、製造と品質の管理、副作用の報告、安定した供給などが承認後も求められます[9]。どの猫に、どれくらいの量を、どのように投与するか(効能・効果と用法・用量)も、承認の内容で決まります。

2026年10月24日時点で、開発元は発売日と価格を公式には発表していません[5]。承認や発売の情報は、IAM CAT のニュースのページで確認できます[5]。

Nekometry でシニア期の年齢を確かめる

慢性腎臓病は高齢の猫に多い病気です[1]。うちの猫が人間でいうと何歳にあたるかは、年齢の換算ツールで確認できます。

Nekometryのツール

年齢を人間に換算する

猫の年齢から、人間でいうと何歳かとライフステージがわかります。

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